那賀朔樹(ナガサク・イツキ)です。活字中毒ステージ4の書店員ナガサクが、ついに店長になってしまいました。なんというか、奮闘記ライクな、雑記泣言風味。
>>let's have a party

 大好きな作家は何人かいるが、大好きなシリーズというものがある(当然、後者の作者は前者だ)。シリーズにも色々あるが、ナガサクは「仲間もの」にとにかく弱い。例えば、京極夏彦の京極堂シリーズ*1とか。シリーズじゃないけど、恩田陸の「ネバーランド」*2の4人組とか。

 で、仲間もののシリーズという意味ではもっとも好きなのが、西澤保彦の「匠千暁シリーズ」*3だ。シリーズが複数出版社に渡っているという事情から、時系列などの説明は各作品の著者後書きに詳しいが、ここでおさらい(紹介)しておく(下の画像の番号に合致)。

1.彼女が死んだ夜(角川文庫)
2.麦酒の家の冒険(講談社文庫)
3.子羊たちの聖夜(角川文庫)
4.スコッチゲーム(角川文庫)
5.依存(幻冬舎文庫)
↑ここまでが時系列に沿った長編
↓ここからが時系列に縛られない短編集(親本発表順)
6.解体諸因(講談社文庫)
7.謎亭論処(祥伝社ノベルス)
8.黒の貴婦人(幻冬舎文庫)

 どちらかというと、事件の渦中にいるよりも、主要登場人物の4人が、データだけで推理・討論していく展開である。彼らと常にあるのはビール。酒飲み→推理→酒飲み→推理と、読んでいるうちにやたらビールが恋しくなる小説なのだ(本当に)。
 会話主体なので、どうしても理屈っぽい言い回しが多くなる。それがこのシリーズのウリでもあるのだが、ネックにもなるのかもしれん。ちなみに、ナガサクの勤める書店では、もう3年ほど、シリーズ全点平積みである。「読む順番はこうですよ〜」とPOPをつけて、第一作「彼女が死んだ夜」は100冊以上売った*4。第二作を読もうと思ってくれた方は5〜6割程度。ただ、2作目を買ってくれた人は「依存」まで読んでくれる場合が殆どだ(第一作以外の売り上げ数はほぼ横這いである)。これ、結構凄いことだと思う。
 キャラクターも魅力的だ。朴念仁のタックと、絶世の美女タカチ、そしてお祭り男ボアン先輩は一度読んだら忘れられないキャラクターだろう。ヘビーな展開の中、ボアン先輩の存在が緩衝材的な役割も果たす。
 だが、シリーズでもっとも注目すべきは、作品を重ねるごとに変化するタックとタカチの関係だ。テーマだけなら、ヘビーな話が多い。けれど、ボアン先輩やもう一人の主人公ウサコも含め、タックとタカチのやり取りに、「救い」を見る思いになるのだ。
 長編はすべてタックらが大学在学時の話で、「彼女が死んだ夜」の2回生の夏から始まり、「依存」の時点では3回生の夏。各短編集にはその間のエピソードや彼らの大学卒業後の話などがあり、サーガ的(大げさかな)な様相も。今後、4回生時の話や卒業編の執筆を著者が宣言しているので、ファンとしては楽しみ。本音を言えば、他のシリーズや単発作品を後回しにしてでもこのシリーズをたくさん書いて欲しいのだが、でもまあ、我慢ですな。
 是非、「彼女が死んだ夜」を手にとって見て欲しい。読んでみて、面白いと思ったら、順番に「依存」までゴー。読んでみて微妙だったら、「ネバーランド」*5をどうぞ(笑)。
 ナガサクの勤める店に来てくれれば、いつでも平積みになってるから。このシリーズを日本一売る店になりたいねえ。

1彼女が死んだ夜  2麦酒の家の冒険  3仔羊たちの聖夜(イヴ)  4スコッチ・ゲーム
5依存  6解体諸因  7謎亭論処―匠千暁の事件簿  8黒の貴婦人



*1妖怪シリーズとも呼ばれている。が、氏の書く小説は全部妖怪が出てくるのでね。この呼称には個人的に疑問。よって、京極堂シリーズで固定。
*2青春小説の傑作。
*3「タックシリーズ」「タック&タカチシリーズ」「キャンパス4人組シリーズ」など、ファンによってさまざまな呼称をもつ。どれも捨てがたいが、オーソドックスな呼称に固定してみる。
*4まだ売れているのだが、版元に在庫がないので、注文してもなかなか入荷しない。重版かけてくれ!
*5冒頭参照
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